コラム「理・夢・久・遊」

NO.37 サステナブルな農法「協生農法」から学ぶ

消費(お金で買う)生活にどっぶり偏っている自分を省みて、遅まきながら生産(作る)生活を暮らしに取り入れようと思った。
「衣食住」のうち、まず「食」の生産に関与できないかと思っていたら、「協生農法(ソニーコンピュータサイエンス研究所)」というユニークな農法と出会うことができ、さっそく体験会に参加してみた。

農業というと、一般的には単一種(例、トマト・リンゴ)の生育条件を最適化するために、肥料を加え害虫を駆除して収量を最大化する「慣行農法」が主流である。
「有機農法(化学的な合成肥料と農薬を使用しない)」や「自然農法(農薬や化学肥料を使用しない)」もあるが、生物(植物)生態系という視点で言えば、畑内の植物の種類は限定的であり、エコシステムとは言い難い。

生物(植物)生態系の最適化から始まる協生農法は、畑に複数の植物が群生している。
それぞれの特性を活かして最大限共生できるような生態学的最適化の環境(畑)づくりが特徴である。
不耕起・無施肥・無農薬で、通常雑草も刈り取らない。
短期的な収量を目的とした慣行農法では、化学肥料の過剰使用(河川を通じた海洋汚染)、モノカルチャーで疲弊した土壌、表土が露出して砂漠化が進んでしまう副作用も生んでしまう。
生物(植物)多様性と生態系機能を回復させる協生農法の畑は、一年草も多年草も群生している。
野菜や果樹以上に雑草があり、多種の野菜と果樹がが混生密生されているエコシステム(マルチ)畑である。
生態系に沿っているので、害虫の異常発生なども皆無だそうだ。
病害虫の異常発生は、短期的効率的な農薬や過剰肥料も要因の一つなのである。
問題の震源地は、地球温暖化も含めて、人為の可能性が高いということである。

組織マネジメントでも同様の問題が起こってはいないか。
短期的効果のための一見合理的・効率的なマネジメント手法の導入。
その結果の職場のエコシステムの崩壊。
諦め職場、無関心職場、冷え冷え職場、ギスギス職場、自己責任職場の増殖。
うつ病、ハラスメント、コンプライアンス、多数の情報共有会議など自分たちの施策の副作用で内向きなマネジメントに追われていないか。

目先の何かを選択・強化することは、全体性のどこかに副作用や無理を生じさせている可能性がある。
これからのマネジメントは、要素還元的なマイクロマネジメントより、社会構成主義的な全体性(身体性に近い)の視座からのアプローチがますます重要になってくる。

対処療法では、どこかに歪みが生じてしまう。
地球もたった一つしかない。
拡大消費(お金で買う)だけでは、どこかが破綻してしまう。
持続可能な生産と消費のエコシステム。
これからの生きる・働くのキーワード。