コラム「理・夢・久・遊」
今春、家族で東京・深川の富岡八幡宮に立ち寄る機会があった。
ご存じの方もいると思うが、大鳥居の脇に伊能忠敬の銅像がある。
伊能忠敬が江戸時代に初の実測日本地図を作った人であることは、日本の義務教育を受けた方なら殆どの方が知っている。
忠敬は「富岡八幡宮」に参拝してから日本地図作成の旅に出たらしく、それでこの地に銅像が設置されていたのだ。
銅像脇の人物紹介を見て驚いた。
忠敬は50歳で家督を譲ってから天文学、暦学、測量学を学んでいる。
日本地図作成のために歩測を開始したのは55歳なのだ。
71歳まで測量を続け、73歳に没している。(現代においては何歳に相当するのだろうか)
測量してできた日本地図は、
蝦夷地(北海道)から鹿児島(屋久島・種子島)までである。
50歳で新しい学びを始めている。
71歳までは地図を作り続けている。
忠敬の職業人生のピークは71歳だったのではないだろうか。
我が国では、70歳までの就業機会確保のために「高年齢者雇用安定法」が改正され、事業主への努力義務が政府から要請されている。
働くことは、生きがいそのものにもなりうるので、70歳まで働くこともエイジフリー(年齢に囚われない働き方)も否定されるべきではないと思うが、
外から強制され生活のために働くのか、
自分の内から湧き出るものに突き動かされて働くのか、
これは職業人生や生きがいそのものを決定づけてしまう。
外から強制されたイノベーターも私は知らない。
外発的な動機でイノベーションが起こるとも思えない。
70歳まで働く時代は来るなら、忠敬のように定年(仕事の終焉)時を職業人生のピークにしたいものである。
そのエネルギー源は、インセンティブなんかを超越した内なる自分の興味・関心なのであろう。
自分の内なる興味・関心は何なのだろうか。
(2021/4/27)