お役立ち

No.14 「5127回」と「1万回」

圧倒的な吸引力、紙パック不要、コードレス。集塵方式の掃除機の世界に革命を起こした英国・ダイソン社のサイクロン掃除機。
創業者ジェームズ・ダイソンは、5年の歳月と5127回のプロトタイプ(試作品)を作り、大成功を収めた。
要は、5127回も失敗していたのである。

ダイソン氏は、電話機・蓄音器・白熱電球・発電機・活動写真・トースターなど1300もの発明をしたトーマス・アルバ・エジソンを尊敬しているという。
発明王エジソンは1万回の失敗に対して、「私は失敗したのではない。ただうまくいかない方法を1万通り発見しただけだ」 という名言を残した。
また、「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」という言葉も有名だ。
「ひらめき」「努力」どちらが重要かという意見も分かれるところだが、「99%の努力をした者に(だけ)、1%のひらめきが降りてくる」というのが真実ではないだろうか。

新型コロナウィルスによって我々は「失敗」を許容したり、働き方改革によって「努力する」ことを怠ってはいないだろうか。

「失敗したらどうするの」というゼロリスクシンドロームを論破することは、困難である。
世の中に絶対とか完璧という事象はほとんどなく、成功率90%を95%までにすることはできても、95%を100%にするためには膨大な労力とコストを覚悟しなければならないことがほとんどだ。
新型コロナウィルスの感染者をゼロにするために三密行動をとり続けることは、生命論的には尊い正論ではあるが、天文学的な経済的死者と生活困窮者を招くことになる。
どちらも大切な命である。
正解のない問いへの大局観や覚悟が求められる。

また、他者強制的な「努力」は論外だが、内発的な動機に基づく自己決定的な努力は既に「好き」の領域であり、努力とは言い難い。
好きなことに勝手に熱中しているイノベーターに、働き方改革の正しいルールで束縛していては、イノベーションも起こりにくい。

ダイソン氏も、本当に嫌だったら数回の挑戦で諦めていたはずだ。
だが、彼は失敗をも恐れず、うまくいかない方法を5127回も試行錯誤した。
そのご褒美が、掃除機のイノベーションだった。

 

(2020/8/7)