お役立ち

No.13「正しい・誤り/良し・悪し」と「好き・嫌い」

2020年6月、Link-Uで一橋ビジネススクールの 楠木 建 教授 にご登壇いただいた。
先生の著書としては、経営戦略書としては異例の20万部以上も売れている『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010年、東洋経済新報社)が有名だが、実は『すべては「好き嫌い」から始まる』『「好き嫌い」と才能』『好きなようにしてください:たった一つの「仕事」の原則』『「好き嫌い」と経営』と「好き嫌い」関連本が多い。

経営戦略の世界では、ファクト(客観的事実)最優先、未来予測に基づく数値的経営計画、ROEによる企業価値測定、コンプライアンス(法令遵守)など「正しいか誤りか」「良いか悪いか」が大手を振っている。
学問の世界でもエビデンスやサイエンスは再現性があるので研究の土台となっている。
その世界で「好き嫌い」を主張されている稀有な経営学者である。
本当にエキセントリックだ。

しかし、楠木先生は仰る。
「努力(や犠牲)にはインセンティブが必要だが、好きにはインセンティブはいらない。だって好きなんだから。やるのに理由がいらないでしょ。」、と。
確かに「好き」は、強制や報酬とは無縁な内発的ハイパワーエンジンとなる。
コロンブスの卵のように、明解・痛快・愉快である。

釣りやゴルフ好きに早朝出勤手当はいらない。
撮り鉄に出張手当はいらない。
深夜残業もブラック企業もない。
一心不乱に集中して楽しんでいる。

「それは、趣味の話ですよね。」と思われる方もいるだろう。
なら、「趣味のように仕事ができないか」と言い換えてもかまわない。
「好きこそものの上手なれ」なのである。

好きなことをし過ぎてメンタルダウンしたなんてきいたことがない。
嫌な仕事を我慢してするからメンタルに支障が起こるのである。
会社組織が嫌だから、通勤が面倒だから、在宅勤務で個別パフォーマンスに没入したくなるのである。
好きの前では、集合研修もいらない。
高い山に登るために、先輩の暗黙知も組織の組織知も勝手に盗んでいるはずだ。
そこから現出するのは、尖った個性と圧倒的な競争優位性である。

個人の「好き」にもっと素直になってよいのかもしれない。
十人十色、一人十色の「好き」を活かす組織風土(ネットワーク)を創ることが重要になってくる(これは組合の役割でもある)
そんな個人と組織風土があれば、「イノベーション」なんて言葉も不要となっているはずだ。
今までの多くのイノベーターも、イノベーションなんて意識していなかった。
ただ、個人の「好き」に没頭しただけであったのだから。

 

(2020/7/14)