コラム「理・夢・久・遊」

No.10 リアル(身体性)とオンライン(非身体性)の間

「働き方改革」でも進まなかった「テレワーク(特に在宅勤務)」※1が、新型コロナウィルスの三密行動の影響で大手企業のホワイトカラーを中心に進んでいる。※2

「在宅勤務」でも、職務と成果が明確なジョブ型の仕事、「コトをする仕事」の作業効率は確かに向上している。
また、在宅からでも視覚と聴覚の二感のみを集中的に使うオンライン会議を活用すれば、情報や知識共有、職務分担や仕事の進捗管理もはかどる。
かつ、在宅なので、大幅な移動時間や交通費・宿泊費・会場費・備品費などのコストも削減できる。
在宅勤務者が増えれば将来的にはオフィスも縮小できるだろう。

「コトをする仕事」にはメリットが大きくても、無から有への「コトを生み出す仕事」では一考が必要である。
コトを生み出すイノベーションには、多様な価値感を越境させて、融合し、創発できるリアルな場が効果的なのである。
参加者たちが醸し出す表情、間、リンクしていく会話、リラックスした雰囲気などが閃きの起点となる。
五感(味覚を除いた四感?)や身体性、その場の空気感などが微妙に創発に影響してくるのだ。

在宅勤務では、仕事を効率的に処理する能力は高まっても、イノベーションは起こりにくい。
安全なオンライン上で、表面的に他者とつながるだけでは不十分なのである。

これからオンライン(非身体性)な働き方や場が増えてくるだろう。
だからこそ、リアル(身体性)な場の重要性を忘れてはならない。
だが不可能なら、最新のMR(複合現実)※3技術を駆使して、バーチャル空間にアバターで参加するオンライン会議でリアルに近い場を創造するしかない。
一堂に会せる場が貴重な時代がやってくるかもしれない。

※1:今回の「テレワーク」は、カフェなどで仕事を行う「モバイルワーク」やサテライトオフィスやコワーキングスペースでの「サードプレイスオフィス勤務」というより、自宅で働く「在宅勤務」を指している。

※2:逆な言い方をすれば、日本の企業数の99.7%を占める中小企業や製造現場や接客現場などリアルな現場では在宅勤務は進んでいない。今回は、「在宅勤務」適用者向けのコラムである。

※3:「Mixed Reality」の略で、「複合現実」。AR技術を更に発展させ、3D表示や複数同時体験などもでバーチャル世界がよりリアルに体験できる。

  • 360°カメラのような映像の世界(仮想現実)に実際に入り込んだかのような体験ができるのが、VR(Virtual Reality/仮想現実)。
  • 「ポケモンGO」のように現実の世界に仮想の世界を重ねて「拡張」するのが、AR(Augmented Reality/拡張現実)。

 

(2020/4/21)